2019.10.12
Road to 10.17 vol.5 松岡 洸希(埼玉武蔵ヒートベアーズ)
本格的な投手経験は1年余り。今春、地元の県立高校を卒業した“無印”の若者が、わずか半年の期間で大きく成長し、NPB入りという夢を叶えようとしている。
埼玉武蔵の松岡洸希は右のサイドハンドから力のある直球をバンバン打者に投げ込んでねじ伏せるタイプ。BCL選抜として挑んだ9月25日のオリックスファームとの交流試合で自己最速となる149㌔をマーク。投げるたびに直球は速さを増し、底知れぬ伸びしろを見せている。
「真っすぐが自分の生命線。その日の真っすぐの調子ですべてが決まります」
地元・埼玉の県立桶川西高を今春卒業したばかり。もともとは内野手で、高校3年の春から投手も兼任するようになった。ただ、昨夏の北埼玉大会では優勝した花咲徳栄高にコールド負け。それでも松岡は「上のレベルで野球をやりたかった。大学に進むと4年間、社会人では3年間はNPBには行けない。BCLは1年でNPBに行ける可能性があると思った」と地元球団に入団した。
入団早々、大きな転機が訪れる。上手投げだったフォームを見た片山博視コーチから「横で投げてみたら」というアドバイスを受けた。「やってみたら感触がよかった」と手応えを掴み、動画サイトなどでサイドスローの投手を見ながら研究を重ねた。特に元ヤクルトのイム・チャンヨン投手のフォームを真似てみると球速がどんどんアップ。5月には145㌔をマークした。
6月にBCL選抜メンバーに選ばれ、DeNAファームと対戦。1回を3奪三振、無失点と好投すると自信がつき始める。
「最初は緊張しながらマウンドに上がっていましたが、徐々に落ち着いて周りが見えるようになりました。次に何が起きるのかを考えるようになり、メンタルが成長できました」
今季は中継ぎとして32試合に登板し、防御率は3.58だったが、27回2/3を投げ、33奪三振とイニングを上回る数を残した。何より、投げるたびに球速がアップし、シーズン当初に140㌔台そこそこだった球速は10㌔近くアップした。
「高卒でまだ体力がないので、夏場にもう少し調子が落ちるかと思っていましたが、自分なりに投げることができました。まだまだ、最速は更新したい」
8月31日に19歳になったばかり。無限の可能性を感じさせるサイドハンドの成長は止まらない。
文/岡田 浩人