土生選手へのインタビュー

茨城アストロプラネッツ入団後1年で、中日ドラゴンズの第5巡目指名を受けた土生翔太。2023年NPBドラフトでは、伊藤琉偉(新潟アルビレックスBC→東京ヤクルトスワローズ5位)とともに、BCリーグとしては2019年以来の支配下指名となった。春季キャンプでは二軍スタートだったが一軍合流。実戦でも登板して好結果を残している。茨城の、そしてBCリーグファンの期待を担う土生投手に話を聞いた。

横浜高校から桜美林大学へ

在籍したのは横浜高校野球部。だが、土生は公式戦の登板は一度もしたことがない。ベンチにも、3年の春、関東大会で一度入ったのみ。その頃の最速は144キロだった。高2の時からパーソナルトレーナーに指導を受け、トレーニングを積んだことから、ピッチングが徐々に結果に結びついてき始めた。「主に捻転という部分です。自分はどうしても硬かったので、ねじりを上手く出せるようなドリルやトレーニングをし始めて、球速が上がり始めました。続けているうちにだんだん安定して球速が出せるようになりましたね」

桜美林大学に入ってからは1年から試合に出始め、コツコツトレーニングも続けて球速は上がってきていた。特別コーチとして在籍する野村弘樹さん(元横浜)にも指導を受けた。
「キャッチボールをちゃんとやりなさいとずっと言われていたので、キャッチボールは今も毎日大切にやっています」大きく成長した大学4年時にプロ志望届を提出。ドラフト指名を待った。ただ、最高球速が150キロを超したのが9月頃と遅かったためか、指名漏れとなった。

1年でNPBへ行くために

「自分はその時調子が良かったんです。2年かけてNPBに行くより、1年で行きたいという思いが強かった。1年でとなったら、やはり独立リーグが一番だという話は聞いていました。茨城アストロプラネッツを選んだのは、今の監督の巽真悟さん(当時投手コーチ兼投手)に声をかけて頂きました。『俺だったら1年でNPBに支配下で行かせてあげる』と」

かくして土生は独立リーグの扉を叩いた。そして、BCリーグが開幕する前に、茨城の色川冬馬GMが主宰するトライアウトチーム「アジアンブリーズ」に参加して、アメリカへ飛ぶこととなった。ここでも大きな経験を積んだ土生。本人に知らされてはいなかったが、アメリカでも獲得オファーがあったという。「マイナーリーガーたちと練習や試合をするんですけど、本当にスイングが強い。1球の重みというのが全然違いましたね。日本だと外野フライとか二塁打で終わるような球が、マイナーリーガーだとホームランになったりするので、そこが全然違うと思いました」

帰国後、BCリーグが開幕。先発で13試合、中継ぎで7試合に登板した。
「高校・大学はリーグ戦があっても短期間。半年間フルで戦うということになると、悪い時でも投げなきゃいけない。その状況の中で気持ちの持っていき方というのは大分変わりました」登板に向けての準備、そしてマウンドでの意識や考え方も変わってきた。以前より冷静になり、バッターを見ることも出来るようになった。先発の時は波が大きかったが、中継ぎになってコンスタントに球速を出しつつ安定感も増すようになった。

だが、茨城アストロプラネッツで得られたものの一番は「フィジカル」だという。
「以前からウエイトトレーニングには力を入れていましたが、茨城はよりウエイトに力を入れています。フィジカル面では本当に強くなりました。今はまだ先のことまでは言えないですけど、怪我しない体、シーズンを戦える体が得られたと思います」
さらには「ほとんどがスカウトの来ている試合だった」というリーグ戦の環境もある。NPBへ入るという目標に向けて、土生は着実に進んでいった。スカウトの評価も上がっていた。
6月と9月のBC選抜戦でも続けてメンバーに選ばれ、NPBファームを相手に実力を示し続ける。力のあるストレートはコンスタントに150キロ以上を計測していた。

ドラフト当日はアクシデントも

10月、いよいよドラフト指名の当日となった。緊張が走る中、中日ドラゴンズから晴れて支配下5巡目の指名となったが「実は電波が悪くて、名前が呼ばれるのを聞いてないんです(笑)」という。
「え、俺呼ばれた?うわー!っていう感じで。正直名前は聞きたかったですね。知り合いの方だったり、色んな方から動画をもらいはしましたが」
指名の瞬間ではなかったが、もちろん喜びは大きかった。支配下指名と育成指名では重みも待遇も全く違う。それは今まで土生が積み上げてきた成果が評価されたということだっただろう。

本当にやり続ければ、可能性は誰でも見えてくる

土生にとってBCリーグはどんな場所だったのか。そう問えば、「1年で大きく成長させてくれた場所です。BCリーグがなければ今の自分はないので。本当に感謝しています」と力強く答えた。
「今のBCリーグは、やはり以前よりNPBに行ける可能性は高くなっていると思います。1日も練習を怠らず、本当にやり続ければ、可能性は誰でも見えてくるのかなと思いますね」

BCリーガーに一番大事だと思うのは、やはり「続けること」だと土生は強く言い切る。
「続けること。あと正直なところ、タイミングです」
だからこそ、そのタイミングを掴むため、1日も怠らず準備をする。いいタイミングで打つ、いいタイミングでいいピッチングをするために、自分自身を知り、自分のための努力を積み重ねる。
「それに尽きる。常にやり続けていることが、自分自身の成長に繋がります」

オープン戦では既に一軍選手と一緒にプレイし、緊張しながらもしっかりと地面に足を着けている土生翔太。「新人離れ」と評価されたマウンドさばきは、BCリーグを通した出会いや経験、そして今まで自分がやり続けてきたこと、全てによって得られた成果だ。倦まず弛まず努力を続け、土生はこれからも成長を続けるだろう。

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